News 2003年4月11日 01:42 PM 更新

デジタルホーム実現のリーダーシップを日本に期待――Gelsinger氏基調講演(1/2)

IDF2日目はPat Gelsinger氏ら米Intelエグゼクティブによる基調講演が行われた。CTO兼上席副社長のPatrick Gelsinger氏は、デジタルホーム実現のリーダーシップを日本に期待するとし、通信とコンピュータとの融合によってIT市場は新たな成長を遂げると主張した

 水曜日から千葉県舞浜で開催中の開発者向け会議「インテル デベロッパ・フォーラム Japan Spring 2003」(IDF Japan)の2日目、米国から来日中の同社エグゼクティブによる基調講演が行われた。

 先陣を切ったのは、同社上席副社長兼最高技術責任者のPatrick Gelsinger氏。

 続いて、Anand Chandrasekher氏(モバイルプラットフォームグループ事業本部副社長兼事業本部長)、Darin Billerbeck氏(ワイヤレス・コミュニケーション&コンピューティング事業本部副社長兼フラッシュ製品事業部長)、William Siu(副社長兼デスクトップ・プラットフォームグループ事業本部長)の3氏が、それぞれの担当分野に関してインテルのビジョンと製品計画について話した。

デジタルホーム実現のリーダー役を日本に期待

 「日本における家庭へのブロードバンド普及の話を聞くたびに、うらやましく思う。“日本に住みたいな”と言うと、僕のワイフは冗談のように受け流すが、本当にうらやましいと思ってる。米国では100Kbps以上ならブロードバンドの仲間入りというのが現状。私の自宅も500Kbpsの回線しか来ていないんだ」。

 そう話したのはGelsinger氏。「私も自宅に100Mbpsの回線が欲しい。自宅に簡単に光ファイバー回線を、しかも安価に引ける日本のブロードバンドインフラは、今後の発展に向けた大きな資産だ」。

 そして「日本はブロードバンド環境、ワイヤレスアクセスで先端を走り、家電分野に力強い企業を抱えている。家電製品がワイヤレス機能を装備し、ネットワークに接続され、ブロードバンドで世界とつながるようになれば、そこに大きな可能性が生まれてくる。この分野で日本はユニークな立場にいる。デジタルホームのリーダーシップを取れるのは日本だ」と、日本の開発者たちを持ち上げた。


2004年ノートPCコンセプトモデルのNewportを手に話すGelsinger氏

 Gelsinger氏は講演の冒頭で、戦争やテロ、SARSなど暗い世相、IT業界の落ち込みなどに触れ「IT業界はもうだめだという人もいる。もう終わった市場なのだと。しかし、私の考えは違う。これからが、IT業界が堅実に発展する成長期なのだ」と反論した。

 IT業界が成長する上で、ネット家電やワイヤレス技術、ブロードバンドアプリケーションなどの分野で、日本にはまだまだリーダシップを発揮する仕事が残っているというわけだ。

 では、なぜIT業界が今後、継続的に成長を続けると断言できるのだろうか?

今は過度の悲壮感に包まれているだけ

 Gelsinger氏は世界の鉄鋼産業の成長課程について紹介した。「すべての産業が市場の立ち上がりから一度のスランプも経験せずに成長するわけではない。たとえば鉄鋼産業は1932年前後に生産量が激減し、先行きがないと言われた。しかしその後回復し、堅実な成長を遂げている」。

 こうした市場の成長パターンは、過度の期待と過度の悲壮感が成す業だとGelsinger氏はいう。つまり新しい産業が生まれ、それに対して過度の期待が集まりすぎ、産業としての実体が伴わないままに急激な成長をしてしまう。かつてのインターネットブーム、ドットコムブームでは、過度の期待から、事業の実体を伴わないままにカンバンだけで資金が集まる現象があった。


世界の鉄鋼市場の成長グラフ


不合理な成長のあとには、必ず不合理な減速がある

 そうした不合理なほどの急成長の後に来るのは、過度の失望による不合理な市場の縮小である。IT不況が始まった頃から言われ続けていることだが、IT業界の急激な落ち込み、熱狂の沈静化があったからといって、ITそのものの価値が下がっているわけではない。むしろ、その間の技術的な進歩により価値はさらに増しているはずなのだ。

[本田雅一, ITmedia]

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